東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)に関する情報

インタビュー ~防災科学研究拠点メンバーからのメッセージ~


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復興を牽引するコーディーネーターとして

小野田 泰明 (東北大学大学院 工学研究科 教授)


東日本大震災が防災との関わりの始まり

 私の専門は、建築の中でも「建築計画」という分野です。この分野は、建物の具体的な設計よりも前の段階の仕事で、建物や建築プロジェクトのコンセプトを作り、そのコンセプトを達成するために必要な機能や規模、さらにデザインや運営戦略などを精査していきます。また、その建物をベストな形に仕上げていくために、多くの関係者の調整も行います。どの世界でも、ものをデザインするということは、ある条件の中で結果をどのように最適化していくかということかもしれませんが、建築の場合、最適の概念の中に人の意識、未来の可能性、美的価値といった曖昧な部分も含まれていることが特徴です。

 私自身は、研究者と実務者の両面をもって仕事をしてきました。また、建物を計画することは、建築が現実社会の中でどのように振舞うかを想定する仕事でもあるので、当然「防災」のことも考えながら仕事をしてきた訳ですが、東日本大震災以前は、「防災」をそう特別視して取り扱ってきたわけではありません。ですから、この防災科学研究拠点のメンバーになったものも、東日本大震災以降です。

 3月11日の東日本大震災では、このキャンパスでも多くの建物が被災しました。それらの建物に入っていた皆さんが行き場を失ったなかで、被災研究室を一旦どこか別の建物に避難させ、さらにプレハブに仮移転し、プレハブから本棟に移転するという難しいコーディネーションが緊急に求められていました。立場上、それを引き受けて格闘することになったのが、恥ずかしながら「災害」に本格的に関わるきっかけです。

 そうした大学内での対応が一段落した中で、被災地にある拠点大学としての東北大学ということを考えました。被災地が元気にならないと東北や東北大学、ひいては日本全体が元気にならないわけです。そんな中、震災復興計画の策定という難題を抱えるいくつかの自治体からお声がけを頂き、被災地のお手伝を始めることになった訳です。

建築計画の職能を復興計画の立案プロセスに

 被災自治体では、もちろん深刻さや規模は違うものの、東北大学のキャンパスで起こったことと同じようなことが起こっています。つまり、津波によって住まいを奪われ、仮設住宅に行き、また自宅に戻ってくるというプロセスです。そうした一連のプロセスの中で、戻ってくる場所はどういうデザインであるべきかを考えることが求められているのですが、辛かった被災経験も少なからず役に立っています。

 前にも話したように、私の本職、建築計画では、建物に関係する多くの人々や組織の言い分を調整しその建物をベストの形に仕上げていくことが要求されていますが、これは、災害からの復興を目指す街づくりにも共通する面があります。そのため、これまで防災や災害復興に関わってこなかった私のような立場の人間でも、その専門性を活かして力になれているように思います。ということで現在は、いくつかの被災地で、研究者というよりも実務者として、復興計画を作るお手伝いをさせていただいています。

 その中で気づいたことは、津波の被害は想像以上に複雑だということです。復興計画作りは、複雑な被害をどう評価してハザードデザインをするのか、そしてそのハザードの上にどう街を作るのか、様々な変数があって複雑なパズルを解くような作業です。さらに、それぞれの自治体でスタイルが違うので、ある手法はこの自治体の計画立案には有効だけれども、別の自治体では全く別の方法が必要になることも良くあります。それで、お手伝いしている自治体の機構の違いやキャラクターなどを考えながらサポートをしています。

人々がその土地にとどまれるビジョンを喫緊に

 被災地の人々が立ち直るために、すぐにやらなければいけないことはたくさんあります。職がないことや家がないことも大きな問題ですが、最大の問題は、被災者の方が将来のビジョンを描けないことです。海岸部で被災された方の避難所の生活を見ていても、漁ができる船が残った人の表情には比較的明るいものがあります。それは、いまは被災して動けないけれども、「漁に出られるようにさえなれば、お金を稼ぐことができる」という将来設計ができるからなのです。

 被災された方は、家や職を失って将来設計が立てづらくなっていいます。住む場所がないことや職がないことに比べると、復興ビジョンのようなものは抽象的なものと思われがちですが、被災者の方が将来設計を立てるためにも、復興ビジョンを希望が持てる形で早期に提示することが必要です。そういうビジョンがないと、被災者の方がその土地からはなれてしまい本当の復興は遠いものになってしまいます。

 一方、中長期的には、災害で被災したときにも有効に機能するフレキシビリティやダイナミズムのある行政機構のあり方、高齢化に加えこの災害でより人口が減ってしまった地域が柔らいつながりの仕組みを維持しながら自立していく方法などについての研究が必要と感じています。

研究成果と実践をつなぐ

 最前線で復興計画作りのお手伝いをさせていただいている者の感想として、今村先生のグループの研究には助けられています。津波の状況を可視化できるので各種対策や街づくりの善し悪しを視覚的に評価できるからです。そういった意味で、地震のハザードマップなどもリスクを判断するのに役に立っています。

 私たちのような実践チームが防災拠点の下で活動することで、防災研究の成果を現場に迅速にとどけることが出来ているのではないかと思います。さらに今後は、拠点研究成果を活用する役割から、現場発意の研究シーズを研究者に届けることも可能となるはずです。また構想段階ですが、いくつかの研究分野が連携するプロジェクトを実際のフィールドで展開することも可能だと考えています。

 「国際」という観点からですか。そうですね、災害時でも有効に機能する行政機構のあり方や地域コミュニティを維持しながら復興する方法論などを提案出来るのではないでしょうか。災害時にも個々が独立しながら連携し得る、柔らかいが、強い社会を具現化する環境のデザイン。こうしたことが、防災科学研究拠点として海外に輸出しうる成果となるといいなと思っています。












 小野田 泰明 (おのだ やすあき)
 東北大学大学院 工学研究科
 都市・建築学専攻 教授
 博士(工学)

 専門:建築計画
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